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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 猿回し
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 猿回し (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 125,671 characters · 252 screens
人足達が路の上へ投り上げたのは、まさに使い古りた沢庵石。五、六貫は確かと言った、泥と糠に塗れた真っ黒な丸石です。
「八、よく見てくれ。その石の凹んだところに、糠と一緒に血が付いている筈だ」
平次は弾み切って居ります。
「ありますよ、こいつは確かに血だ。糠と一緒に、石の凹みにコッテリ付いて居ますぜ、――すると曲者は、この石を振り上げて、お萩の頭を叩き割ったわけですね」
八五郎は胆をつぶしてしまいました。
「やってみるがいい、その石を振り上げて人間の頭が殴れたら、お前は人間の人別を抜いて、天狗の子分になれ」
「すると誰です、下手人は」
「待ちなよ――巴屋の女共はどうした」
「臭いのに驚いて、皆んな路地の外へ逃げ出してしまいましたよ」
「その中から、お内儀のお余野をつれて来てくれ、早くだ。間違いがあっちゃいけない」
「へエッ」
八五郎は飛出しましたが、ものの煙草二、三服の間も経たぬうちに、ぼんやり戻って来ました。
「お内儀のお余野は、ツイ今しがた、溝から石の上った時、何処へとも無くフラフラと行ってしまったそうですよ」
「しまった。浜町河岸か、両国橋だ、行って見ろ」
平次も八五郎も、其処に居る人足も、女共まで飛出しましたが、お余野の姿は何処にも見えず、二日経ってから、中洲のあたりで、その水死体を見付けたのは浅ましいことでした。