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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 猿回し
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 猿回し (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 125,671 characters · 252 screens
「何でもありません、鳥脅しの吹矢筒で、この通り」
などと覗いて見せるのです。
「此野郎ッ」
吉は笠にかかって取って押さえました。
「あッ、あっしは何にも知りやしません」
「何を言いやがる、昨夜此家の庭先へ忍び込んで、お嬢さんを突殺したのは手前だろう」
「あ、飛んでもない、あっしはお嬢さんの顔もろくに知らない、――御新造のお通さんには随分言い度いこともあるが」
ジタバタする首根っこをつかまえて、平次のところへ引摺って来たのです。
「銭形の親分、下手人は此野郎ですよ」
「よしよし俺に任せろ、ところで、――浪次とか言ったな」
「へェへェ、これは銭形の親分、よく御存じで」
「お前は人殺しの疑いを受けて居ることは承知だろうな」
縁側に引付けて平次は、この男の口から何んかを引き出そうとして居る様子です。素より、吹矢筒を持って、此辺にウロウロして居る間抜けな男が、娘のお照殺しの下手人とは思って居ない様子でした。
「親分、あっしはお嬢さん殺しなんて、飛んでもない」
「それじゃ、何用があって、目黒から根津まで、ウロウロやって来るんだ」
「あっしは、御新造のお通さんに用があったんですよ、お嬢さんのお照さんとやらは、私は顔も知りやしません。