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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 猿回し
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 猿回し (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 125,671 characters · 252 screens
羽目を攀じ登って窓から飛込むと、
「灯、灯」
とわめき散らします。
「それよ」
下っ引の持っていた御用の提灯が二つ、窓から人間と一緒に飛込むと、中はまさに落花狼藉の有様です。
「あッ」
主人と女房と、番頭と下女の四人、あちこちに、滅茶々々に縛られたまま転がされ、下女のお光だけが、曲者も油断してあまり厳重に縛らなかったものか、猿轡がずっこけた上、縛られた両手も大方解けて、足を柱に縛られたまま、ここを先途とわめき立てて居るのでした。
「黙って縛られる奴があるものか、四人も揃って」
八五郎はブツブツ口小言をいいながら、四人のいましめを解き始めると、
「待ちなよ、八、そいつは結び目を見て置き度い。お勝手から包丁を持って来て、縄の方を切ってくれ」
「でも細引は二人ですが、女二人は良い紐ですよ」
「物惜みするなよ」
包丁を持って来た平次は、四人の縛めを惜し気もなく切りほどきました。
「親分さん、どうしましょう。泥棒は千両から入っている銭箱を持って逃げてしまいましたが」
貧弱な主人の佐兵衛は、泣き出しそうな顔をして訴えるのです。
「曲者は二人でしたよ、右左から刃物を突きつけられちゃ、私共は口もきけません。