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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 猿回し
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 猿回し (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 125,671 characters · 252 screens
みすみす縛られた上、猿轡まで噛まされて、その上、御主人が仏壇の下に隠してあった、銭箱まで持って行かれてしまいました」
番頭はオロオロしながらそれに註を入れました。
「人相は見なかったのか」
「一人は中肉中背で、一人は小柄でした。やくざ風の小意気ななりでしたが、手拭で頬被りして、人相はわかりません」
主人は言うのです。
「声位は聴いたことだろう」
「入って来るから逃げ出すまで、一言も口をききません。虫ケラのように黙って居りました」
女房のお作でした。
「縛られた細引の結び目が女結びになっているのがあるが――」
平次は早くも一つの手掛りを掴んだようです。
「小さい方の曲者は、女だったかも知れません。縛られる時、ひどく手が柔らかだと思いました。――それに頬被りの下から、大きい髱がはみ出して居たようで」
主人は大変なことに思い当ったのです。
「金の隠してある場所が直ぐわかったのか」
「刃物で脅かされては、言わないわけに行きませんでした」
「金は外に無かったのか」
「今のところ、家にはこれだけでございました」
主人は盗られた金が惜しくなったのか、本当に泣き出しそうな顔をするのでした。