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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控 猿回し

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控 猿回し (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 125,671 characters · 252 screens

Aozora Bunko

平次はさり気なく信吉を誘います。

「へェ?」

信吉は何が何やらわからぬままに、平次と八五郎について、お猿と一緒に梅の家を出ました。

目当ては其処から池の端の妙月庵へ、

「信吉、この縁の下に潜って、お猿をあの床下の格子から中へ入れてみてくれないか」

平次はそんな事を頼むのです。

「へェ、やってはみますが、このお猿は里で育って臆病ですから、床下へ入ってくれるかどうかわかりませんよ」

信吉はそう言いながら、お猿のお玉をつれて縁の下に潜りましたが、お玉はひどく脅えて、床下などへは、とても入りそうもありません。押し込むように無理に入れても、戻って来て信吉の肩の上に飛付くのです。

「此処から床下へ猿を入れて、お勝手の落しを開ける工夫は無いか」

「飛んでもない、そんな事はとても出来ませんよ」

「そしてお勝手へ出て、戸を開けさせるのだ」

「そんな事が出来るわけはありません」

信吉は以ての外の顔をするのです。

「よしよし猿は本当に脅えて居るようだが、もう一軒試し度いところがある」

妙月庵をいい加減にして切上げた平次は、八五郎と信吉をつれて、金沢町の淡路屋に向いました。

「皆んな居るだろうな、お猿に欄間を潜らせてみるから――首尾よく行ったらお手拍子を頼むぜ」