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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控 猿回し

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控 猿回し (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 125,671 characters · 252 screens

Aozora Bunko

八五郎は有頂天でした。淡路屋は主人の不景気な佐兵衛、女房の達者な大年増お作、番頭の食えそうも無い伊之助、下女のちょいと美しいお光まで揃って、猿曳の信吉が、猿のお玉を欄間に押上げて、其処から家の中へ入れようとする芸当を見て居ります。

「太夫は少し御機嫌が悪いじゃないか」

八五郎はまた囃し続けます。

「いけませんよ、お猿はこんな事をやったことが無いから、尻込みをするだけで」

信吉はお猿の機嫌の悪さに手を焼いて、閉口し切って居ります。

続いて、蔀になって居る窓の戸を、桟を抜いて内から開けさせることをやらせてみましたが、これも全く不成功で、お猿は戸に桟のあることさえ知らない様子です。

「親分、駄目ですね」

「念には念を入れただけさ、――もうよかろうよ、八」

平次の手が挙がると、八五郎が主人に飛びかかると一緒でした。

「御用ッ」

「何をッ」

番頭の伊之助が、隠し持った匕首で、平次に飛びかかるのを、叩き落して二た組の争いが始まった時、予て用意した下っ引が六人、

「御用」

「神妙にせい」

二人の女を籠めて、その争いをおっ取り囲んでしまったのです。

同時に下谷竹町に向った一隊は、浪宅で下手な謡を唸っている、宇佐美敬太郎を召し捕ったことは言うまでもありません。