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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,106 characters · 292 screens
姫路藩士成滝近江の一子勇之進から、藤枝蔵人に宛てたもので、
三十一年目で父近江を討った不倶戴天の敵の在処を見付けたのは喜びに堪えない。この上は人交えもせず、一挙に勝負を決するために、即刻三味線堀際の空地まで出向くよう、万一この申入れに反くにおいては、この旨江戸中に触れさせた上、その方の家に踏込み、娘の前で討ち取るがそれも覚悟か――
といった恐ろしく厳重な呼出し状です。
「お礼どの、この事情を御存じか」
「いえ」
お礼は何か何やら解らぬ様子で頭を振るばかり。
「いずれは蔵人殿若い時分、武士の意気地でなされた事であろう、――それにしても、三十一年を距てての敵討とは、古今、聞きも及ばぬことではないか」
佐々波金十郎は独り言ともなくこう言うのでした。
検屍が済んだのは翌る朝、そのうちに町内や近所の人も駆けつけ、わけても三河屋の主人甚兵衛と、掛人の佐々波金十郎、それに、死んだ蔵人とわけても昵懇にしていた、佐野屋九助、伊勢屋玉吉などは、本当に親身になって世話をしてくれました。
三十一年目の仇討も前代未聞のことであり、討手が逃げてしまったのも、追討や返討の心配のない場合だけに、疑えば疑えることですが、たぶん不意に襲いかかって、名乗りもかけず後ろから浴びせたので、敵討とは言いながら、人に顔を見られるのが後ろめたくなり、その