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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,106 characters · 292 screens
「…………」
平次は黙って、徳三郎という男を見やりました。年の頃は二十五六、平次と幾つも違いませんが、謙遜って、隅っこに丸く坐り、狭い袷で膝小僧を隠している様子は、いかにも人柄らしく見えます。
柄相応な藍微塵の素袷、掛守りを少し覗かせて、洗い髪の刷毛先をチョイと左に外らせた、色白の柔和な顔立ち、御用聞というよりは、大町人の手代か、芝居者といった風にも見えますが、とにかく、思慮も分別もフンダンにありそうで、少し半間なガラッ八とは、日当りの具合からしてだいぶ違いそうです。
「宜しい末長く面倒を見てやりましょうと引受けたが、何分俺も取る年だ。もう十手捕縄を、お上へ返そうと思っている矢先でもあり、よしんば闇の礫にしても外から物を投げられて、大事な眼へ怪我をするようなことじゃ、子分の仕込みもむつかしい」
「そんな事が、兄哥」
「いや、銭形の、そう言ってくれるのは有難いが、石原の利助も、この辺が引込み時だろう。それに比べると、銭形の兄哥は、今が日の出の勢いだ、――頼みと言うのは、この徳三郎を引受けて、俺に代って立派な御用聞に仕込んではくれまいか。万一眼識にかなえば、お品――出戻りの醜い面じゃ、大して有難くもあるまいが、とにかく、お品と娶合せるなり、それが厭なら外から嫁を取って、俺の跡を継がしてもいい」