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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,106 characters · 292 screens
「平次、二階へ登ってみよう」
「ヘエ」
「ここだよ、弥助の殺されたのは」
二階の浅い手摺の下は、隣から続く板屋根で、その向うは、往来を隔ててお濠になっております。
「弥助の死体を見ても宜しゅうございましょうか」
「いいとも」
一応断った平次。二階の真ん中、北枕に寝かした弥助の顔から、白い巾を取ってしばらく見詰めておりましたが、
「旦那、この額の疵は、死んでから付いたものでございますね」
「何?」
妙なことを言い出します。
「眼を突く前に、投げ銭で額を割られたのなら、黒血が溜るとか流れるとかしなきゃアなりません」
「なるほど」
「ところが、弥助の額は、黒血も溜らず、腫れもせず、それに、皮が破れているのに、血が出ていないのは、どうしたわけでしょう」
「フーム」
「これは、眼を突かれて打っ倒れるはずみに、ここにあった煙草盆で打ったのでございますよ。傷あとは、よく見ると三角な溝になっていますから、銭の跡でないことはわかります」
「…………」
新三郎はもう口も利きません。引入れられるように、弥助の額口を覗いて、平次の言葉に点頭くばかり、階段の登り口からは、友次郎と利助、これは、悪意に充ちた眼を光らせながらも、呆気に取られて、平次の言葉を聞いております。