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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,106 characters · 292 screens
半紙一枚、細い文字で優し気に書いた仮名文字は、妙に平次の神経に響きます。
「これは女の書いた字だよ。それに腑に落ちないことばかりだ、お前が行ったのは何日のことだ」
「今日ですよ、――ほんの今朝ほど」
「まだ陽は高い、ちょいとのぞいてみよう」
「江島屋の裏は大変ですよ」
平次は八五郎に案内させて、亀戸まで飛びました。
「あの通りだ。親分」
亀戸へ着いたのはもう夕方、薄暗くなりかけた江島屋の寮の裏、畠の中にかがりまでたいて、五、六十人の野次馬がひしめき合っているのでした。その野次馬の中にはくわまで持ったのがあり、それぞれの道具を持ったのや、それとはなしに棒切れなどを持ったのや、老若男女をこみにして、石灯籠を中心に、二、三反歩の畠を、メチャメチャに掘り荒らしているのです。
「さアさア帰ってくれ、たれに相談をして、人の土地を掘り荒らすんだ。もぐらの真似はもうごめんだ、さっさと帰らないと、お上の手をかりて退散させるぜ」
縁側の下に突っ立って、ふんぷんたる声を張り上げるのは、江島屋の当主の半三郎でしょう。四十前後の精力的な赤い顔、こんな男は、本当にどんなことでもやりかねないでしょう。