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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,106 characters · 292 screens
「あの騒ぎのあった昨日の朝、私が起出してみると、お勝手の戸が開いておりました」
「それっきりか」
「そんな事は滅多にないことでございます。戸締りは主人が御自分で見廻りますから――」
「それから」
「主人が亡くなったと聞いて、私も一と目お別れをするつもりで奥へ参りますと、番頭さんに途中で止められてしまいました」
「?」
「二十年も奉公した私に、主人の死に顔を見せられないはずはございません。あんまり変だから、そっと隙見をすると――」
七平はゴクリと固唾を呑みます。
「なんか変ったことがあったのか」
「若旦那の金三郎さんと、番頭の用助さんと、主人の甥の久太郎さんが、何かヒソヒソ相談をしておりましたが、――チラと見た主人の死に顔が、どうも容易じゃないように思います。それに、小耳に挟んだ言葉の中に、紐の跡が頸筋に残っているというようなこともありました」
「フム」
「もしあれが変死だったら、死んだ主人がお気の毒でございます。御存じの通り、評判の悪い主人でございましたが、二十年奉公した私は、黙ってあのまま葬られるのを見てはいられません」
下男七平の話はなかなかに含蓄がありそうです。