Japanese reading practice

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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(九)不死の霊薬

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,106 characters · 292 screens

Aozora Bunko

「――フム」

「どうも――、人間が皆んな両国に集まってしまったせいか、今晩の江戸の淋しさというものはありませんでしたよ」

「馬鹿野郎」

「どこへ行ったって人っ子一人居やしません。背中の若様といろいろお話をしながらやって来ると、人形町の往来で、いきなり前に立ちはだかった者があるじゃありませんか。何だろうと思って、ヒョイと見ると、ブル、ブル、ブル」

「確りしろ、なんて間抜けな声を出すんだ。好い若い者の癖に」

「それがその、一件なんで」

「何だ、一件というのは」

「磔柱を背負った、血だらけな男で――」

「えッ」

「今日鈴ヶ森で処刑になった、お主殺しの何とかいう野郎ですよ」

「そんな馬鹿な事があるものか」

「馬鹿だか馬鹿でねえか、若様に聞いてみりゃア判ります。――ハッと思って駆け抜けると、そいつがまた執念深く追っかけて来るじゃありませんか。人形町から八丁堀まで駆け通し、お屋敷の玄関へ着くと気がゆるんでブッ倒れてしまいましたが、まだ門のあたりに磔柱を背負った血だらけな奴が居やしませんか、そっと覗いてみて下さい」

歯の根も合わないような恐怖のうちに、これだけ話の筋を通すのは、勇吉にしては全く手一杯の努力でした。