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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,106 characters · 292 screens
「その文句を書いて貰おうか、お品さんのいい筆蹟で――」
「あら」
お品は少し照れながらも、半切と硯箱を借りて「大舟町市兵衛百四十四夜」と認め、極り悪そうに平次の前に押しやりました。
「八、こいつは判じ物だ。少し考えてくれ」
「ヘエ――」
八五郎はその文句を覗いて、鼻の穴をふくらましておりますが、結構な智恵などは浮びそうもありません。
「大舟町というのはどこだい」
と平次。
「戸塚の裏街道に、大船というところはあるがね」
「そいつは東海道の田圃の中だ。曲者が集まるのは江戸の真ん中だぜ」
「お膝元には大舟も小舟もねえ――」
「待ちな、八、洒落が素通りしちゃ、せっかくの判じ物が台無しだ。大舟はないだろうが、小舟町というのはあるぜ」
「なるほど、荒布橋から中ノ橋へかけて、小舟町だ。そこに市兵衛というのがありゃ、今からすぐでも踏込んで縛って来る」
「行ってみるがいい、そんな事で判りゃ大手柄だ」
「じゃ、親分、お品さん」
ガラッ八の八五郎はサッと飛出しました。ノッソリしているようでも、御用となると、この男には羽が生えます。
平次はお品の書いた判じ物のような文字を、凝と見詰めました。