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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,106 characters · 292 screens
「見舞ですよ、正真正銘親分の見舞に違えねえ証拠は、この通り手土産を持って来たじゃありませんか」
「大層な口上だな、――塩煎餅の袋でも持って来たんだろう、どうせ」
平次は病人らしくもない元気で、続けざまに八五郎をからかっております。
「どうせ――は情けねえ、見て下さいよ、梅寿堂の上菓子が一と折、灘の生一本が五升」
「上菓子は解っているが、病気見舞に酒を持って来る奴もねえものだ」
「こいつを卵酒にして飲むと、大概の風邪は一ぺんにケシ飛びますよ。もっとも、親分がイヤなら、あっしが飲みながら、一と晩ぐらいは看病してやってもいい」
「呆れた野郎だ」
平次が精一杯呆れ返って、八五郎の馬鹿馬鹿しさも市が栄えたわけですが、何かしら、平次の見当では、割り切れないものがそこに残っているのです。
「変な顔をするじゃありませんか、親分」
ガラッ八は狭い袷の前を合せて、平次のけげんな視線の前にモジモジしました。
「上菓子一と折に、剣菱が五升――少し奢りが過ぎるようだぜ。八、どこからそんな工面をして来たんだ」
「工面なんかしませんよ」
「手前にしちゃ大した散財じゃないか。岡っ引が金を持っているなんざ、褒めたことじゃねえ、どこからそんな金を持って来たんだよ、八」