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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,062 characters · 276 screens

Aozora Bunko

平次はすっかり持て余してしまいました。

「こいつはいけねえ。あんな綺麗な娘一人、どこへ隠しておいたってピカピカするから、三日と知れずにいるはずはないと思ったのは、俺の料簡違いだ。さて、こうなりゃ始めからやり直しだぞ」

高々と腕を拱いて、朝っから軒の釣忍と睨めっこをしております。

「親分、今日は」

言葉より先に、格子をガラリと、入って来たガラッ八。

「ああガラッ八か、何か変った事でもあるのかい」

平次は腕を解きましたが、上眼使いに妙に沈んだ調子です。

「親分でもねえ、何て不景気なんだろう、近江屋のはまだですかい」

「それが解りゃ手前なんかに何か変った事――なんて訊きやしねえ」

「御挨拶だね、生憎変った事と言ったら、気のきいた雌犬にも吠え付かれねえ」

「不景気な野郎じゃねえか、相変らずお小遣がねえんだろう」

「図星ッ、さすがに親分は眼が高え、そこを見込んで少し貸してもれえてエくらいのものだ」

「馬鹿、人が見たら笑うぜ、手なんか出して、ホラ、入用だけ持って行くがいい――たんとはねえよ」

平次は懐から財布を出して、投り加減にガラッ八の方へ押しやりました。

「有難え、だから親分は感心さ。