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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(五)金の鯉
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,062 characters · 276 screens
「これで、何もかも済んだ。皆んなの衆、遅くなったが引取って貰いたい。乗物も用意してあるはず――」
平次は顔を起しました。
もう丑刻(二時)近いでしょう。傾く月が、障子のない窓を漏れて寒々と尼の項を照します。
翌る日の朝、八丁堀から笹野新三郎出役、とにもかくにも形式通り大町人の変死を取調べましたが、河童に引込まれたとも、竪川の主の金の鯉の祟りであったとも言い、人の噂も平次の調べも一向要領を得ません。
やがて平次が蒟蒻問答のような事を言うと、与力笹野新三郎はそれが解ったのか解らないのか、心得顔に引揚げてしまいました。
庵室は空っぽ、良海尼は前夜のうちに消えてなくなって、それっきり帰って来なかったのです。
「驚いたね、親分、――どうしてあの尼さんと解ったんで?」
ガラッ八は執拗に根掘り葉掘り訊ねます。
「頭の濡れないのは尼さんばかりだからさ。それに、松風村雨の話を聴いていたから、あの尼さんの伊勢訛りで、フと気が付いたんだ」
「なるほどね、まるで判じ物みたいだ」
「手前もその判じ物を当てるコツを早く覚えるがいい。物事を理詰めに考えて、当てはまる絵解きが一つしかなくなるまで行くんだ。