Japanische Klassiker mit Furigana
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わらわのはんせいがい
妾の半生涯
福田 英子
Lesen Sie 妾の半生涯 (わらわのはんせいがい) von 福田 英子 (ふくだひでこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 64.051 Zeichen · 122 Bildschirme
窓はほんの光線取りにして、鉄の棒を廻らし如何なる剛力の者来ればとて、破牢など思いも寄らぬ体、いと堅牢なり。水を乞うて、手水をつかえば、やがて小さき窓より朝の物を差し入れられぬ。到底喉を下るまじと思いしに、案外にも味わい旨くて瞬間に喫べ尽しつ、われながら胆太きに呆れたり。食事終りて牢内を歩むに、ふと厚き板の間の隙より、床下の見ゆるに心付き、試みに眸を凝らせば、アア其処に我が同志の赤毛布を纏いつつ、同じく散歩するが見えたり。妾と相隣りて入牢せるは、内藤六四郎氏の声なり。稲垣、古井はいずれの獄に拘留せられしにやあらん。地獄の裡に堕ちながら、慣るるにつれて、身の苦艱の薄らぐままに、ひたすら想い出でらるるは、故郷の父母さては東京、大阪の有志が上なり、一念ここに及ぶごとに熱涙の迸るを覚ゆるなりき。
翌朝食事終りて後、訊問所に引き出されて、住所、職業、身分、年齢、出生の地の事ども訊問せられ、遂にこの度当地に来りし理由を質されて、ただ漫遊なりと答えけるに、かく汝らを拘引するは、確乎たる見込ありての事なり、未練らしう包み隠さずして、有休に申し立ててこそ汝らが平生の振舞にも似合わしけれとありければ、尤もの事と思い、終に述懐書にあるが如き意見にて大事に与せる事を申し立てぬ。