Japanische Klassiker mit Furigana
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わらわのはんせいがい
妾の半生涯
福田 英子
Lesen Sie 妾の半生涯 (わらわのはんせいがい) von 福田 英子 (ふくだひでこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 64.051 Zeichen · 122 Bildschirme
六 直訴
囚人より署長に直訴するは、ほとんど破格の事として許しがたき無礼の振舞に算えらるる由なるも、妾は少しもその事を知らず、ある日巡廻し来れる署長を呼び止めしに、署長も意外の感ありしものの如くなりしが、他の罪人と同一ならぬ理由を以て妾の直訴を聞き取り、更に意外の感ありし様子にて、彼女をも訊問の上、黙して帰署したりと思うやがての事、彼女は願いの如く、妾の室に帰り来りぬ。あとにて聞けばこの事の真相こそ実に筆にするだに汚らわしき限りなれ。今日は知らずその当時は長き年月の無聊の余りにやあらん、男囚の間には男色盛んに行われ、女囚もまた互いに同気を求めて夫婦の如き関係を生じ、両女の中の割合に心雄々しきは夫の如き気風となり、優しき方は妻らしく、かくて不倫の愛に楽しみ耽りて、永年の束縛を忘れ、一朝変心する者あれば、男女間における嫉妬の心を生じて、人を傷い自ら殺すなどの椿事を惹き起すを常としたりき。現に厠に入りて、職業用の鋏刀もて自殺を企てし女囚をば妾も目の当りに見て親しく知れりき。されば無智蒙昧の監守どもが、妾の品性を認め得ず、純潔なる慈しみの振舞を以て、直ちに破倫非道の罪悪と速断しけるもまた強ちに無理ならねど、さりとては余りに可笑しく、腹立たしくて、今もなお忘れがたき記念の一つぞこれなる。