Japanische Klassiker mit Furigana
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こざくらひめものがたり
小桜姫物語
浅野 和三郎
Lesen Sie 小桜姫物語 (こざくらひめものがたり) von 浅野 和三郎 (あさのわさぶろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 136.097 Zeichen · 267 Bildschirme
いっそのことすべてをあきらめて、おとなしく鎌倉へ戻って専心養生につとめようかしら……。』そんな素直な考えも心のどこかに囁かないでもなかったのですが、次ぎの瞬間には例の負けぎらいが私の全身を包んで了うのでした。『良人は自分の眼の前で打死したではないか……憎いのはあの北條……縦令何事があろうとも、今更おめおめと親許などに……。』
鬼の心になり切った私は、両親の好意に背き、同時に又天をも人をも怨みつづけて、生甲斐のない日子を算えていましたが、それもそう長いことではなく、いよいよ私にとりて地上生活の最後の日が到着いたしました。
現世の人達から観れば、死というものは何やら薄気味のわるい、何やら縁起でもないものに思われるでございましょうが、私どもから観れば、それは一疋の蛾が繭を破って脱け出るのにも類した、格別不思議とも無気味とも思われない、自然の現象に過ぎませぬ。従って私としては割合に平気な気持で自分の臨終の模様をお話しすることができるのでございます。
四百年も以前のことで、大変記憶は薄らぎましたが、ざっと私のその時の実感を述べますると――何よりも先ず目立って感じられるのは、気がだんだん遠くなって行くことで、それは丁度、あのうたた寝の気持――正気のあるような、又無いような、何んとも言えぬうつらうつらした気分なのでござい