Japanische Klassiker mit Furigana
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こざくらひめものがたり
小桜姫物語
浅野 和三郎
Lesen Sie 小桜姫物語 (こざくらひめものがたり) von 浅野 和三郎 (あさのわさぶろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 136.097 Zeichen · 267 Bildschirme
五、臨終
でも右申上げたとおり、私は別に貞女の亀鑑でも何でもございませぬ。私はただどこまでも自分の勝手を通した、一本気の女性だったに過ぎないのでございます。
五、臨終
気のすすまぬ現世時代の話も一と通り片づいて、私は何やら身が軽くなったように感じます。そちらから御覧になったら私達の住む世界は甚だたよりのないように見えるかも知れませぬが、こちらから現世を振りかえると、それは暗い、せせこましい、空虚な世界――何う思い直して見ても、今更それを物語ろうという気分にはなり兼ねます。とりわけ私の生涯などは、どなたのよりも一層つまらない一生だったのでございますから……。
え、まだ私の臨終の前後の事情がはっきりしていないと仰っしゃるか……そういえばホンにそうでございます。では致方がございません、これから大急ぎで、一と通りそれを申上げて了うことに致しましょう。
前にも述べたとおり、私の躯はだんだん衰弱して来たのでございます。床についてもさっぱり安眠ができない……箸を執っても一向食物が喉に通らない……心の中はただむしゃくしゃ……、口惜しい、怨めしい、味気ない、さびしい、なさけない……何が何やら自分にもけじめのない、さまざまの妄念妄想が、暴風雨のように私の衰えた躰の内をかけめぐって居るのです。