Japanische Klassiker mit Furigana
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こざくらひめものがたり
小桜姫物語
浅野 和三郎
Lesen Sie 小桜姫物語 (こざくらひめものがたり) von 浅野 和三郎 (あさのわさぶろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 136.097 Zeichen · 267 Bildschirme
四方を板囲いにして、僅かに正面の入口のみを残し、内部は三坪ばかりの板敷、屋根は丸味のついたこけら葺き、どこにも装飾らしいものはないのですが、ただすべてがいかにも神さびて、屋根にも、柱にも、古い苔が厚く蒸して居り、それが塵一つなき、飽まで浄らかな環境としっくり融け合って居りますので、実に何ともいえぬ落付きがありました。私は覚えず叫びました。
『まァ何という結構な所でございましょう! 私、こんなところで暮しとうございます……。』
するとお爺さんは満足らしい微笑を老顔に湛へて、徐ろに言われました。――
『実はここがそちの修行場なのじゃ。モー別に下の岩屋に帰るにも及ばぬ。早速内部へ入って見るがよい。何も彼も一切取り揃えてあるから……。』
私はうれしくもあれば、また意外でもあり、言わるるままに急いで建物の内部へ入って見ますと、中央正面の白木の机の上には果して日頃信仰の目標である、例の御神鏡がいつの間にか据えられて居り、そしてその側には、私の母の形見の、あのなつかしい懐剣までもきちんと載せられてありました。
私はわれを忘れて御神前に拝跪して心から感謝の言葉を述べたことでございました。