Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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こざくらひめものがたり

小桜姫物語

浅野 和三郎

Lesen Sie 小桜姫物語 (こざくらひめものがたり) von 浅野 和三郎 (あさのわさぶろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 136.097 Zeichen · 267 Bildschirme

Aozora Bunko

前にも申上げた通り、私の修行場の所在地は山の中腹の平坦地で、崖の上に立って眺めますと、立木の隙間からずっと遠方が眼に入り、なかなかの絶景でございます。どこにも平野らしい所はなく、見渡すかぎり山又山、高いのも低いのも、又色の濃いのも淡いのも、いろいろありますが、どれも皆樹木の茂った山ばかり、尖った岩山などはただの一つも見えません。それ等が十重二十重に重なり合って絵巻物をくり拡げているところは、全く素晴らしい眺めで、ツイうっとりと見とれて、時の経つのも忘れて了う位でございます。

それから又あちこちの木々の茂みの中に、何ともいえぬ美しい鳥の音が聴えます。それは、昔鎌倉の奥山でよくきき慣れた時鳥の声に幾分似たところもありますが、しかしそれよりはもッと冴えて、賑かで、そして複雑った音色でございます。ただ一人の話相手とてもない私はどれ丈この鳥の音に慰められたか知れませぬ。どんな種類の鳥かしらと、或る時念の為めにお爺さんに伺って見ましたら、それはこちらの世界でもよほど珍らしい鳥で、現界には全然棲んでいないと申すことでございました。尤も音色が美しい割に毛並は案外つまらない鳥で、ある時不図近くの枝にとまっているところを見ると、大さは鳩位、幾分現界の鷹に似て、頚部に長い毛が生えていました。