Japanische Klassiker mit Furigana
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こざくらひめものがたり
小桜姫物語
浅野 和三郎
Lesen Sie 小桜姫物語 (こざくらひめものがたり) von 浅野 和三郎 (あさのわさぶろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 136.097 Zeichen · 267 Bildschirme
明けても暮れても、眼に入るものはただ山ばかり、ひたすら修行三昧に永い歳月を送った私でございますから、尚更この海の景色が気に入ったのでございましょう、しばらくの間私は全くすべてを打忘れて、砂丘の上に立ち尽して、つくづくと見惚れて了ったのでございました。
『どうじゃ、なかなかの良い眺めであろうが……。』
そう言われて私はやっと自分に戻りました。
『お爺さま、わたくし、こんななごやかな、良い景色は、まだ一度も見たためしがございませぬ……。ここは何と申すところでございますか?』
『これが竜宮界の入口なのじゃ。ここから竜宮はそう遠くない……。』
『竜宮は矢張り海の底にあるのでございますか?』
『イヤイヤあれは例によりて人間どもの勝手な仮構事じゃ。乙姫様は決して魚族の親戚でもなければ又人魚の叔母様でもない……。が、もともと竜宮は理想の別世界なのであるから、造ろうと思えば海の底にでも、又その他の何処にでも造れる。そこが現世の造りつけの世界と大へんに異う点じゃ……。』
『左様でございますか……。』
何やらよくは腑に落ち兼ねましたが、私はそう御返答するより外に致方がないのでした。