Japanische Klassiker mit Furigana
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こざくらひめものがたり
小桜姫物語
浅野 和三郎
Lesen Sie 小桜姫物語 (こざくらひめものがたり) von 浅野 和三郎 (あさのわさぶろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 136.097 Zeichen · 267 Bildschirme
それは丁度人間が平地を駆けると同じく、指端一つ触れずに、大木の幹をば蹴って、空へ向けて駆け上るのでございますが、その迅さ、見事さ、とても筆や言葉につくせる訳のものではありませぬ。私は覚えず坐席から立ち上って、呆れて上方を見上げましたが、その時はモー天狗さんの姿が頂辺の枝の茂みの中に隠れて了って、どこに居るやら判らなくなって居ました。
と、やがて梢の方で、バリバリという高い音が致します。
『木の枝を折っているナ……。』
お爺さんがそう言われている中に、天狗さんは直径一尺もありそうな、長い大きな杉の枝を片手にして、二三十丈の虚空から、ヒラリと身を躍らして私の見ている、すぐ眼の前に降り立ちました。
『いかがでござる……人間よりも些と腕ぶしが強いでござろうが……。』
いとど得意な面持で天狗さんはそう言って、つづいて手にせる枝をば、あたかもそれが芋殻でもあるかのように、片端からいきっては棄て、引きっては棄て、すっかり粉々にして了いました。
が、私としては天狗さんの力量に驚くよりも、寧しろその飽くまで天真爛漫な無邪気さに感服して了いました。
『あんな鹿爪らしい顔をしているくせに、その心の中は何という可愛いものであろう! これなら神様のお使者としてお役に立つ筈じゃ……。