Japanische Klassiker mit Furigana
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こざくらひめものがたり
小桜姫物語
浅野 和三郎
Lesen Sie 小桜姫物語 (こざくらひめものがたり) von 浅野 和三郎 (あさのわさぶろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 136.097 Zeichen · 267 Bildschirme
瀑布の右手にくねくねと附いている狭い山道、私達はそれをば上へ上へと登って行きました。見るとその辺は老木がぎっしり茂っている、ごくごく淋しい深山で、そして不思議に山彦のよく響く処でございました。漸く山林地帯を出抜けると、そこは最う山の頂辺で、芝草が一面に生えて居り、相当に見晴しのきくところでございました。
『実は今日ここで汝に雨降りの実況を見せるつもりなのじゃ。と申して別に俺が直接にやるのではない。雨には雨の受持がある……。』
そう言って瀑布のお爺さんは、眼を閉じてちょっと黙祷をなさいましたが、間もなくゴーッという音がして、それがあちこちの山々にこだまして、ややしばらく音が止みませんでした。
と見ると、向うに一人の若い男子の姿が現われました。年の頃は三十許、身には丸味がかった袖の浅黄の衣服を着け、そして膝の辺でくくった、矢張り浅黄色の袴を穿き、足は草履に足袋と言った、甚だ身軽な扮装でした。頭髪は茶筌に結っていました。
『これは雨の竜神さんが化けて来たのに相違ない……。』一と目見た時に私はすぐそう感づきました。不思議なもので、いつ覚えたともなく、その頃の私にはそれ位の見わけがつくのでした。