Japanische Klassiker mit Furigana
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こざくらひめものがたり
小桜姫物語
浅野 和三郎
Lesen Sie 小桜姫物語 (こざくらひめものがたり) von 浅野 和三郎 (あさのわさぶろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 136.097 Zeichen · 267 Bildschirme
『何うじゃ実物を視てもまだ判らんかナ。――これは汝のお馴染の爺や……数間の爺やじゃ……。』
そう言われた時の私の頭脳の中には、旧い旧い記憶が電光のように閃きました。――
『まァお前は爺やであったか! そう言えば成るほど昔の面影が残っています。――第一その小鼻の側の黒子……それが何より確かな目標です……。』
『姫さま、俺は今日のようにうれしい事はござりませぬ。』と数間の爺やは砂上に手をついてうれし涙に咽びながら『夙から姫さまに逢わせてもらいたいと神様に御祈願をこめていたのでござりますが、霊界の掟としてなかなかお許しが降りず、とうとう今日までかかって了いましたのじゃ。しかしお目にかかって見ればいつに変らぬお若さ……俺はこれで本望でござりまする……。』
考えて見れば、私達の対面は随分久しぶりの対面でございました。現世で別れた切り、かれこれ二百年近くにもなっているのでございますから……。数間の爺やのことは、ツイうっかりしてまだ一度もお風評を致しませんでしたが、これは、むかし鎌倉の実家に仕えていた老僕なのでございます。私が三浦へ嫁いだ頃は五十歳位でもあったでしょうが、夙に女房に先立たれ、独身で立ち働いている、至って忠実な親爺さんでした。