Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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こざくらひめものがたり

小桜姫物語

浅野 和三郎

Lesen Sie 小桜姫物語 (こざくらひめものがたり) von 浅野 和三郎 (あさのわさぶろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 136.097 Zeichen · 267 Bildschirme

Aozora Bunko

近頃は現界でも、電信とか、電話とか申すものが出来て、斯うした場合によく利用されるそうでございますが、こちらの世界でする仕事も大体それに似たもので、ただもう少し便利なように思われます。『思えば通ずる……。』それがいつも私どものヤリ口なのでございまして……。

さてその際私に感じて来た通信の中では、矢張り良人のが一ばん力強くひびきました。『そなたはいよいよ神として祀られることになり、多年連添った良人として決して仇やおろそかには考えられない。しかもその神社の所在地は、あの油壺の対岸の隠れ家の跡とやら、この上ともしっかりやって貰いますぞ……。』

兎角して居る中に、指導役のお爺さんから御注意がありました。――

『現界ではいよいよ御霊鎮めの儀に取りかかった。そなたはすぐにその準備にかかるように……。』

私の身も心も、その時急に引きしまるように覚えました。

『これから自分はこのお宮に鎮まるのだ……。』

そう思った瞬間に、私の姿はいずくともなく消えて失せて了いました。

後でお爺さんから承るところによると、私というものはその時すっかり御幣の中に入って了ったのだそうで、つまり御幣が自分か、自分が御幣か、その境界が少しも判らなくなったのでございます。