Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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やまをおもう

山を思う

石川 欣一

Lesen Sie 山を思う (やまをおもう) von 石川 欣一 (いしかわきんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 79.814 Zeichen · 157 Bildschirme

Aozora Bunko

その一人がこの娘に惚れている。惚れたといっても山の中のことだから、ラヴ・レターを書いたり、音楽会へ招待したり、そんなことはしない。第一音楽会はないし、ラヴ・レターを書いたところで、Dまで投函に行き、それが電車に積まれてBへ帰って来て娘の家の前を通過し、半みち離れたBの本村の三等郵便局へ行き、そこから一日一回の配達が娘の家まで持って来るような有様だ(もっともこんな莫迦話は本物の小説には書かない。)せいぜい娘の家の背戸へ来て尺八を吹いたり、娘が行水をつかっているのをカボチャの葉がくれにのぞいて娘の親爺にぶん撲られたり、まアそんな真似をしている。

娘は婦人雑誌を読んでいるからロマンチストでセンチメンタリストだ。都会の生活にあこがれを持っている。村の男に対しては非常に冷淡でお高くとまっている。然し夏になると、この男にひどく親切にする。男が山から帰って来ると冷い水を汲んでやったり、長さ三寸位な貧弱な玉蜀黍――山だから大した玉蜀黍は出来ない――を焼いてやったりする。男はよろこんで、たまに登山者の荷物を持ってDまで行ったりすると、何かしら手みやげを買って来る。