Japanische Klassiker mit Furigana
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やまをおもう
山を思う
石川 欣一
Lesen Sie 山を思う (やまをおもう) von 石川 欣一 (いしかわきんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 79.814 Zeichen · 157 Bildschirme
四
南瓜の大きな葉に、露がキラキラ輝いていた。
マーガレットは靴のさきで南瓜の葉の下をかき廻していたが、やがてしゃがんで、大きな林檎を一つひろった。「これはこの林檎の樹」――なる程南瓜のまん中に林檎の木が立っている――「から落ちたので……おゝ冷たい。露で冷えている。」こう云いながら、カリッと音を立てゝ林檎を噛った。―― Have a bite !
さし出した林檎を、私も一口噛って見た。冷たかった。
話はそれ丈だが、考えて見ると呑気なものである。生れて初めて逢った日本人を、陰影の多い裏庭に案内して、おまけに自分の噛った林檎を噛らせるのだから。
四
信州の友人から、しょっ中、山の便りがある。春は雪が解けたと云って来る。夏は登山者が多いと云って来る。冬は炬燵に入ってこの手紙を書くと云って来る。その、いずれの時節の便りにも私は心を引かれ、山を思うのであるが、一番誘惑の強いのは秋の便りである。――霜が降りた。白樺の葉が黄色くなった。梅擬の枝を山からとって来た。そろそろ鳥焼きが始る。昨日は落葉松の林で時雨を聴いた。青木湖の水がますます澄んで行く。――かゝる文句に接するごとに、私は鼻の穴を大きくして、――甚だ芸術的でない、妙な言葉だが――馬が若草の香を嗅ぐように、北安曇高原の秋の空気を嗅ごうとする。