Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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にっき

日記

宮本 百合子

Lesen Sie 日記 (にっき) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 37.447 Zeichen · 76 Bildschirme

Aozora Bunko

三月二十四日

何もすることがないので、午後から丸善の支店へでも行くつもりで、市へ出て見る。かなりにぎやかだ。国分町、東一番町が中央のさかり場になって居るらしい。人通りは多いが田舎臭いところが町の隅々にころがって居る。どことは云えないが田舎くさい。丸善で『明暗』と『生ける屍』を買う。帰ってからよんで見ると、「生ける屍」はとうていすま子の出るべきものではない。誰がニキタになるのか。あれ丈の人格を表現し得る複雑な内的要素を持っている役者は、たとえ新潮がどんなに力こぶを入れたとて見出し得るものではないだろう。

三月二十四日(土曜)

雨が降って居る。段々大風が吹き出して、昼頃には嵐に近くなってしまった。それで帰るのは御中止。退屈なので東京へ手紙を書く。ノートを切って書いたのを見たら、自分ながら何だか情ないような心持になって涙組んでしまった。かなり遠いポストまで自分で出しに行く。他人の家は何ていやなのだろう。到るところに気がねと心遣いと遠慮がウジャウジャして居る。何かにつけて相手の気をよむ心がよく分って、こんなところに一年居たら、どんなに悪利口な自分になったろう、又なるだろうと思う。