Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(五)金の鯉
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 136.062 Zeichen · 276 Bildschirme
「手前どもの商売がよくなると一方には悪くなる方もあるわけでしょう、ツイ人間の浅ましさで、私を怨む者も出来るわけで――」
巴屋はこうスラスラと言いましたが、平次の探るような眼を見ると、ピタリと口を噤んでしまいました。
「旦那、お店を怨む者にお心当りはありませんか」
平次は一歩進めました。
「さア、それは。別に心当りと申すほどの事はありませんが――」
三右衛門は大店の主人らしく、鷹揚に笑ってそっぽを向きます。
その時、平次の眼は、施米の行列の先頭、ちょうど小脇に抱えた笊へ、三升の白米を入れて貰っている二十一二の女の眼と逢いました。
「あ」
平次は危うく声を立てるところでした。
若い人妻らしいその女の美しさが、四方の汚いのに反映して、あたりにも輝かしいばかりでなく、その身扮がまた、顔形とは似も付かぬ凄まじい汚さだったのです。
肩も膝も抜けた素袷、よれよれの帯を締めて、素足に冷飯草履、埃だらけな髪を引詰めて疣尻巻にし、白粉の気が微塵もないのに、沢の良い玉のような顔の色は、どう見てもその日の物に困る人間ではありません。
その女が米を貰って、イソイソと逃げるように立ち走ると、少し離れて南辻橋の袂に立っていた、頬に古い傷痕のある遊び人風の男が、どこやらと合図を交しているのが、物に馴れた平次の眼には、実によく判るのです。