Japanische Klassiker mit Furigana
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あおいはらふじんのたいつり
垢石釣游記
佐藤 垢石
Lesen Sie 垢石釣游記 (あおいはらふじんのたいつり) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 46.298 Zeichen · 100 Bildschirme
鯨肉の鉄火巻も出てきた。鯛の塩焼に、鯛のうしお。捕鯨船は随分御馳走を食わせるところだ。僕のように、食い意地の張っている者には極楽だ。
船に乗込んでから二日目の朝がきた。けれど、濃霧はさっぱり晴れない。丹下船長も途方に暮れているらしいのだ。ところが、午前九時頃になると霧の中に淡い陽が円く浮び出した。船内から歓声が揚った。次第々々に霧が薄くなった。
水平線に展望がきくと、全船員は緊張した。水夫長が檣のクロス・ネストに昇って行って、遙かに遠くの沖を眺めている。ややしばらくすると、鯨群を発見したという合図だ。船員の活動は、俄かにはげしくなった。丹下船長はガンウェーを走って行った。砲の引金を握った。運転手は操縦器を握って沖合をにらんだ。
「フルスピード」
船橋から汽罐室へ、送話管を通して号令が伝わる。船内は次第にざわついてくる。船は白い波を蹴立てて走った。
船首から前方十五、六町の波の上に、ななめに低く霧のように潮の揚るのが、僕の眼にも止まった。鯨の群だ。誰かが
「鰮鯨だっ!」
と叫んだ。初めて、敵にめぐり会ったようなものだ。僕は、逸早く船橋の屋根被いの上へはい上った。