Japanische Klassiker mit Furigana
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わらわのはんせいがい
妾の半生涯
福田 英子
Lesen Sie 妾の半生涯 (わらわのはんせいがい) von 福田 英子 (ふくだひでこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 64.051 Zeichen · 122 Bildschirme
六の婦人を引きて、今や監倉の戸を開かんとせし時、婦人は監外より妾の顔を一目見て、物をもいわず、わっとばかりに泣き出しけり。何故とは知るよしもなけれど、ただこの監獄の様の厳めしう、怖ろしきに心怯えて、かつはこれよりの苦を偲び出でしにやあらんなど、大方に推し測りて、心私かに同情の涙を湛えしに、婦人はやがて妾に向かいて、あなた様には御覚えなきか知らねど、私はかつて一日とてもあなた様を思い忘れしことなし。御顔も能く覚えたり。あなた様は、先年八軒屋の宿屋にて、女乞食に金員を恵まれし事あるべし、その時の女乞食こそは私なれ、何の因縁にてか、再びかかる処にて御目にはかかりたるぞ、これも良人や小供の引き合せにて私の罪を悔いさせ、あなた様に先年の御礼を申し上げよとの事ならん。あなた様が憐れみて五十銭を恵み給いし小供は、悪性の疱瘡にかかり、一週間前に世を去りぬ、今日はその一七日なれば線香なりと手向けやらんと、その病の伝染して顔もまだこの通りの様ながら紙屑拾いに出でたるに、病後の身の遠くへは得も行かれず、籠の物も殖えざれば、これでは線香どころか、一度の食事さえ覚束なしと、悶え苦しみつつふと見れば、人気なき処に着物乾したる家あり。