Japanische Klassiker mit Furigana
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こざくらひめものがたり
小桜姫物語
浅野 和三郎
Lesen Sie 小桜姫物語 (こざくらひめものがたり) von 浅野 和三郎 (あさのわさぶろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 136.097 Zeichen · 267 Bildschirme
その外言葉につくせぬ数々の難儀なこと、危険なことに遇われましたそうで、歳月の経つと共に、そのくわしい記憶は次第に薄れては行っても、その時胸にしみ込んだ、感じのみは今も魂の底から離れずに居るとの仰せでございました。
こんな苦しい道中のことでございますから、御服装などもそれはそれは質素なもので、足には藁沓、身には筒袖、さして男子の旅装束と相違していないのでした。なれども、姫は最初から心に固く覚悟して居られることとて、ただの一度も愚痴めきたことはお口に出されず、それにお体も、かぼそいながら至って御丈夫であった為め、一行の足手纏いになられるようなことは決してなかったと申すことでございます。
かかる艱苦の旅路の裡にありて、姫の心を支うる何よりの誇りは、御自分一人がいつも命のお伴と決って居ることのようでした。『日本一の日の御子から又なきものに愛しまれる……。』そう思う時に、姫の心からは一切の不満、一切の苦労が煙のように消えて了うのでした。当時の習慣でございますから、むろん命の御身辺には夥多の妃達がとりまいて居られました。それ等の中には橘姫よりも遥かに家柄の高いお方もあり、又縹緻自慢の、それはそれは艶麗な美女も居ないのではないのでした。