Japanische Klassiker mit Furigana
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こざくらひめものがたり
小桜姫物語
浅野 和三郎
Lesen Sie 小桜姫物語 (こざくらひめものがたり) von 浅野 和三郎 (あさのわさぶろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 136.097 Zeichen · 267 Bildschirme
私の三浦へ嫁ぎましたのは丁度二十歳の春で山桜が真盛りの時分でございました。それから荒井城内の十幾年の武家生活……随分楽しかった思い出の種子もないではございませぬが、何を申してもその頃は殺伐な空気の漲った戦国時代、北條某とやら申す老獪い成上り者から戦闘を挑まれ、幾度かのはげしい合戦の挙句の果が、あの三年越しの長の籠城、とうとう武運拙く三浦の一族は、良人をはじめとして殆んど全部城を枕に打死して了いました。その時分の不安、焦燥、無念、痛心……今でこそすっかり精神の平静を取り戻し、別にくやしいとも、悲しいとも思わなくなりましたが、当時の私どもの胸には正に修羅の業火が炎々と燃えて居りました。恥かしながら私は一時は神様も怨みました……人を呪いもいたしました……何卒その頃の物語り丈は差控えさせて戴きます……。
大江家の一人娘が何故他家へ嫁いだか、と仰せでございますか……あなたの誘い出しのお上手なのにはほんとうに困って了います……。ではホンの話の筋道だけつけて了うことに致しましょう。現世の人間としては矢張り現世の話に興味を有たるるか存じませぬが、私どもの境涯からは、そう言った地上の事柄はもう別に面白くも、おかしくも何ともないのでございます……。