Japanische Klassiker mit Furigana
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こざくらひめものがたり
小桜姫物語
浅野 和三郎
Lesen Sie 小桜姫物語 (こざくらひめものがたり) von 浅野 和三郎 (あさのわさぶろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 136.097 Zeichen · 267 Bildschirme
この対面につきては前以て指導役のお爺さんからちょっと前触がありました。『汝の母人も近頃は漸く修行が積んで、外出も自由にできるようになったので、是非一度汝に逢わそうかと思っている。何れ近い内にこちらに見えるであろう……。』――私はそれをきいた時は嬉しさで胸が一ぱいでございました。そして母に逢ったらこれも語ろう、あれも訊きたいと、生前死後にかけての積り積れるさまざまの事件が、丁度嵐のように私の頭脳の中に、一度に押し寄せて来たのでした。
それにつけても私の眼に特に力強く浮び出でたのは、前にも申上げた、母の臨終の光景でした。あの見る影もなく、老いさらばえる面影、あの断末魔のはげしい苦悶、あの肉体と幽体とをつなぐ無気味な二本の白い紐、それからあの臨終の床の辺をとりまいた現幽両界の多くの人達の集り……。私はその当時を憶い出して、覚えず涙に暮れつつも、近く訪れるこちらの世界の母がどんな様子をしていられるかを、あれか、これかと際限もなく想像するのでした。
すると、それから間もなく、森閑と鎮まり返った私の修行場の庭に、何やら人の訪れる気配がしましたので、不図振り向いて見ると、それは一人の指導役の老人に導かれた、私のなつかしい母親なのでした。