Japanische Klassiker mit Furigana
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やまをおもう
山を思う
石川 欣一
Lesen Sie 山を思う (やまをおもう) von 石川 欣一 (いしかわきんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 79.814 Zeichen · 157 Bildschirme
天気はいゝし、もっと山の上で遊んでいる予定であったが、彼の状態に不安を抱いた山田さんは、もう帰ろうといゝ出した。いざ天幕をたゝみ、荷ごしらえをするとなると、彼は昔の彼にかえった。何という手際だろう。ピシピシと荷をまとめ、繩でしばって背負子にくゝりつけ、しっかりした足取りで急な雪渓を下りて行く。「晩にや女房のおまんまが食える」などというので、山田さんは安心するが、実はもう頭がすこし変になって来たのである。
彼は大町に帰っても、自分の家に泊らず、一晩を死んだ女房の実家で送り、あくる日山田さん夫婦を見送る。間もなく女房は叩き出した。
彼は大酒をのみ始めた。そして秋、高原にさわやかな風が吹き渡る時、とうとう彼は発狂してしまった。親類の者が集って座敷牢をつくって入れると、彼は着物でも何でも皆引きさいては繩に綯ってしまう。首をくゝるのではない。存在しない荷物をまとめて、それを背負子にくゝりつけるのである。数日、あるいは十数日、はげしい山歩きをして、今日はいよいよ山を出るという、その最後の朝を、彼は夢みているのである。座敷牢の中で陽気にしているのだから、これは悲惨だ。