Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(五)金の鯉
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 136.062 Zeichen · 276 Bildschirme
振り乱した髪が、美しい顔から首筋へ海藻のごとく絡んで、真珠色の凝脂が、ヒクヒクと荒縄の下に蠢く様は、言いようもない、恐ろしい魅惑でした。
「浪江、まだ首を振るか、――わけの解らぬ奴だ」
「…………」
「兄上はあの通り、明日をも知れぬ命だ。取急いで祝言の盃をし、公儀へお届を済まさなければ小永井の家に疵が付く――、文五郎もそのつもりで、すっかり用意を整えているのに何が気に入らなくてお前は頭を振るのだ」
五十がらみの、武士とも町人ともつかぬ男――、旗本の次男に生れて、一度はやくざに身を持ち崩したのが、中年過ぎてから武家に舞い戻って、慾ばかり深くなったといった心持が、姿にも、顔にも言葉遣いにも現れております。
「外に言い交した男でもあると言うのか」
「…………」
浪江は縛られたままに、首を振りました。
「それとも、文五郎が気に入らぬと言うのか」
「…………」
今度は娘の首が真っ直ぐに起って、それを否定しようともしません。
「どうだ、浪江、返事をせぬかい」
「あの、父上様が、はっきりお許し下されば」
わななく声、涙に濡れて、苦痛に歪められて、僅かにこう聴き取れます。
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、兄上は中風で呂れつも廻らない有様だ、許すも許さぬもない」