Classiques japonais avec furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lisez 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 178 609 caractères · 362 écrans
この辺の土地を、いわゆる縄張りと称して渡世している羽村の留に、青梅の勘三という男だった。
「――おうっ、親分」
博労たちは振向いて、
「どうしました、相手の奴あ」
「面目ねえが、逃げられちまった。その上に、福生の若えやつが一人、うしろから、浪人の腰帯にしがみついたところを、抜き浴びせに、腕の付け根から、こう食らって――」
「えっ、斬られたんですか」
「もろに、右の片腕を落されてしまったんで、今、みんなして、福生の部屋まで担いで行った」
「いかさまは食うし、渡世人は一人、片輪にやられるし、何てえざまだ」
「きっと、この仕返しはしてやる」
「親分、それにゃ、ここにうめえ人質がある。そいつを囮に、あしたの市へ、あの浪人を誘き寄せちゃどうだろう。――もし野郎がその策にのらなかったら、女を、売りとばして、いかさまでふん奪られた分け前と、福生の若え者の治療代に当ててしまえばいいでしょう」
「なるほど、踏めるな」
と、勘三は、お稲の襟あしから褄先を、眼でなで廻して、
「野郎を釣る囮にするとは、どうするんだ」
「女を、あした馬市で、入札にして、売りとばすということを、いいふらすんで」