Classiques japonais avec furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lisez 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 178 609 caractères · 362 écrans
六
「そうではあるまい、何か、他に仔細があろう。言え。兄は、どんな事があっても、お前には、怒りはしない」
「じゃ……」と、お信は、考えて、
「何もかも、話しますけれど、兄様、怒ってはいやですよ」
「む……」
「一番上の――お里姉様を殺した人は、あの一角じゃないでしょうか」
「えっ。どうして」
「でも、私は知らなかったけれど、お八重姉さんが、そう言いました。だから、私も今に、きっと、あの一角に殺されるのかも知れないって。――それでも――殺されても関わないから、私は、あの人を忘れることはできないと、私にだけ、口ぐせに、言っていました」
六
「不審だな。一番上の姉のお里は、同藩の市岡氏へ、嫁ぐ約束になった時、それを嫌って入水したのだから」
「いいえ、嘘です。――それもこれも、一角のつけ智恵で、ほんとは、江戸へ行って一緒に暮しているうち、一角に、殺されたのです」
「どうしてお前は、それを、はっきり言える」
「お八重姉さんが、この間、拾って来た物があるんです。うちのお墓のそばに、差し込んであった銀の釵、不思議に思って、寺男に聞くと、三十近い浪人が姉さんのお詣りをする前に、埋けて行ったというではありませんか。