Classiques japonais avec furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lisez 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 178 609 caractères · 362 écrans
刀鍛冶仲間の私刑には、ずいぶんひどい成敗がある。耳や、片腕を、斬り落して、生かしておくのも勝手だし、なぶり殺し、胴試しに、職業の刀でためされても、文句はいえない。
(どうせ、殺されるだろう)
百は覚悟をしようと思った。しかし、母がある、お稲が待っている。片輪にされてもしかたがないが、命だけは助かりたいと思った。
「なぐれ!」
「見せしめだ」
延作たちは、弓の折れで、百の背ぼねをたたきのめした。気を失うと、水をぶっかけて、仕事小屋へ、はいって行く。
飯に、茶うけに、手すきがあると、出て来てなぐった。
――はっと、気がつくと、あたりは暗い。空には、星がまたたいていた。着物は、布海苔みたいに、縒れていた。
「ウーム……」と、百は思わず、ふとく呻いた。骨の髄まで、しんしんと、痛い、だるい、精神がぼうっとする。
水をかけた鋳物土に、膝から下はくいしめられて、一寸の身うごきもできない。がくりと、首を垂れながら――百は心で、母とお稲の名をよんだ。
仕事場と、母屋と、雨戸はみんなしまっていた。もう深夜だった。――ヒタ、ヒタと何処からか近づいてくる忍び足にも、夜露のねばるのが感じられる。