Classiques japonais avec furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lisez 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 178 609 caractères · 362 écrans
「その中に、柳ばしの小稲という、悪い妓があったのだよ。盗んだのは、その小稲で、おまけに、おまえが破門された後、それを縁に、屋敷へも出入りして、名人といわれたお父様が、まあ口惜しいじゃないか、そんな妓の手にのって」
「では、お妾に」
「家は建ててやる、お金はみつぐ、それはまだよいにしても、名人の槌が錆びたのね。魔がさしたのかも知れないわ。しまいには、入りびたり。――そして女は、二年ばかり、ぜいたく三昧をしつくしてから、ほかの男と、逃げてしまうし、お父様は、世間ていを恥じて、床についておしまいになるし……」
「ひどい阿女もあるものだ。そして、その女は今でも、江戸に」
「なんでも、その男とも、上方で別れてから甲府で二度の褄をとって何とかいう土地のばくち打に、根びきされたという話を、家へくる地金の仲買が、弟予たちと、うわさしていたことがある」
「へ……甲府で」と、百は、きょとん、と考える眼をして、
「年は幾歳ぐらい?」
「もう二十六、七だろうね」
「はてな、小稲」
「何か、心あたりがあるの」
「小稲小稲……」
「雛妓の時に前歯を折ったといって、このへんに」と、糸切歯を指して「――ちょびっと、銀を入れているのが、笑う時に、妖婦らしく見えたっけが」