Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

Lisez 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 178 609 caractères · 362 écrans

Aozora Bunko

お稲!」

と、つかんでいる数本の小柄をみせて、

「これやみんな、てめえのために、夜の眼も寝ずに鍛った小柄だから、ここにあるだけくれてやる。からだに仕舞って持ってゆけ!」

さっと、風をついてその一本が飛んでゆくと、

「きゃっッ」

と、お稲は、月へまで、届きそうな悲鳴をあげた。黒い液体が、眉間から青白いその顔へ、見るまに、いくすじも流れだしている。

「これは、師匠のお嬢さん、お袖様のかわりだと思え」

次に送った一本は、ぶすっと、かの女の乳ぶさに立った。

「ウ、ウウム……」ともがくと、幾ふさの葡萄を胸につぶしたように、白い肌は、血に塗りつぶされた。――次へ、次へ、と七本の小柄は、たちまち、百の手から、その影へ移っていって、茨の棘みたいに、白く立った。

「ああ、爽々した……」

百は、熱湯から上がったように、全身に汗をかいて、よろよろと草の中に、腰をついた。――と、何処かで、すさまじい笛の音いろがながれている。誰がふくのか、横笛の音である。安成三五兵衛の愛する八寒嘯の音にそっくりであった。それは、ひとつに静止し得ない人生の行旅と、人間の感情のように、うらむが如く、哭くがごとく、また、笑うが如く――。