Classiques japonais avec furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lisez 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 178 609 caractères · 362 écrans
十
しかしその場合の要求点は、二人とも一致していたので厄介はない。簡単明瞭である。――負けたほうはどんな恥かしめも甘んじて受けること。つまり制裁に服す! である。
それともう一つ、優越者は、お芳を自己のものにする! 敗れたものは恋の資格を失うことであった。何のことはない、お芳にも意思はあるだろうに、立会人の凝議は、彼女の恋までも、八寸玉の中に入れてしまった。
十
慎吾は早速、製作にとりかかった。彼とてもまんざら自信がないわけではない。
戸狩の仲間うちでも、七之助に反感をもっていそうな男を二名、助手として雇って、その男の小屋と設備を、仕事場にあててかかった。
「どんな様子だ? 七のほうは」
同僚が来ると、そればかり探りたがった。
「空家みたいだな、七の家は」
「ふーん、逃げたんじゃないか」
「なに、中で音はしている」
慎吾は常に何かしら彼の迫力に押されていた。藩へ手紙を出して、殊に精製した強力な硝石や薬料をぜいたくに取りよせた。その点では、七之助が相変らず伝統を固持していわゆる口伝式な、妙なものばかりから材料をとっているというやり方に対して、十分な優越をもてた。