Classiques japonais avec furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lisez 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 178 609 caractères · 362 écrans
「オオ」
七は、闇に眼を澄ました。
そして、慎吾が、野袴のすそをからげて、筒へ口火を落した瞬間に、七の唇が不意に、
「しまった!」
と声を飛ばした。
慎吾はハッと思ったらしい。咄嗟に退くべきからだを反対に、思わずひょいと首をつき出して、その筒ぐちを覗いたのである。
異様な音響がした。
火と、血と、筒の裂けるような音!
とたんに、慎吾の首は、形を失って、宙天へ飛んでしまった。
胸のひろがるような爆音が、同時に、初秋の夜空をいっぱいにどかアんと鳴った。五ツの銀光星が北斗のように斜めに浮游することしばらく、やがて、その五ツの星が個々にばらばらと炸裂すると、あざやかな光傘をサッと重ねて、冠、鏡台、姥捨の山々を真っ青に浮かせて見せたかと思うと、その一つの星の色が、臙脂から出た人魂のように、ぽかあ、と瞬間――ほんの瞬間、真っ赤な光を千曲川の水面に映した。
――夢だ! 夢みるような気もちなのだ。
誰もなんにもいうものがない。
上を向いたまま。
腕をくんだまま……。
なんとすばらしい火の美だろう、恐い魔術だろう、瞬間の光焔の中には見上げたものの魂がみんな燃えてしまった。