Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

Lisez 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 178 609 caractères · 362 écrans

Aozora Bunko

「うまく、兵部に抱き込まれた。――だが、どうせ、どう捨てても転んでも、惜しくはねえ体だから、いいようなものの……」

城下へはいった一角は、その翌日、藩の湧井半太夫と青砥弥助をふいに訪ねた。どっちも、一角が仕官時代の旧友ではあり、また、米沢では――いや奥羽の剣人としては、五指のうちに数えられる若者たちだった。

「どうしたんだ? 一角」

ふたりは、眼を瞠って、彼を迎えた。

お互いに、飲ける口を知っているので、松川岸の隣松亭へ行って、

「まあ、久闊は、酒から」

と、すぐに、寛ぎあった。

「――風の便りに、江戸にいるとは聞いていたが」

「いや、面目ねえ、相変らずといいてえが、尾羽打ち枯らしてこの姿だ」

「勿体ないものだね、貴様ほどの腕をもって」

「そいつがかえって、世の中を、真っ直ぐに歩くにゃ邪魔らしい」

「どうだ、吾々も尽力をするが、もう一度、御奉公しては」

「今さら――」

と、苦笑して、

「実あ、こんな体でも、売れ口はついているのだ。それも、俺にゃ相当な条件で」

「そいつは、目出度い話だ、どこへ」

「相手の名をいう前におめえ達にも、相談があるが……。どうだ、乗るか」

「吾々は、藩に籍のある体、そうままには」