Classiques japonais avec furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lisez 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 178 609 caractères · 362 écrans
――三番目のお信は、十五、六か、まだ、至ってあどけない小娘で、これは少し丸顔、兄の丈八郎の方に似ている顔だ。
「――どう見ても、お里そっくりだ。いくら姉妹とはいえ、ああも」
機があったら、口をきいて見たい気がした。
墓地で、ふいに会った時は、場所も場所だし、自分の気持も、妙に尖っていたので、そんな心は出なかったが――。
夜と、昼も、彼はお八重の顔を頭に描いた。――お八重か、お里か、けじめのない一つの眸が、いつも、彼の前にちらついた。
「はてな、俺は恋を? ……」
一度思った女は、きっと、命がけでも取ってきた一角の経験と興味が、また、春と一緒に、胸の中に、頭を擡げだした。水っぽい春の月――風のぬるい春の晩が――妙に彼の血を駆り立てた。
だが、恋はしても、恋には悩まない一角だった。いや、悩んでいる時間すら持たない男だった。押というか、自信というか、ぶつかってゆく。――その手で、お里も、ほかの多くの女をも、経験してきた彼は、やがて、お八重がよく町医の関口庵の所へ通うのを知って、ある夜、わざと、
「お里どの。お里」
と、呼びとめた。
「え?」
案のじょう、お八重は、びっくりした眼を、彼に向けて、