Classiques japonais avec furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lisez 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 178 609 caractères · 362 écrans
美人系は、一つの、病系なのだ。
「旦那様、あの、お手紙が」
宿屋の女中が、取次いできたのを、一角は封をきらないで、
「少し、風邪ぎみで、寝ているといってくれ」
すぐ、お八重の文字と分るのであるが、――一角は、五、六度の遊戯で、もう何の感興も燃えなかった。同時に、この頃は、前のお里のことも、ふッつりと、頭にこだわらなくなった。
「べら棒な。――ほかに男をこしらえた女、俺が手に斬けて、成敗したのは、当りめえだ」
明くる日もまた、女中が、
「旦那様」
「また、手紙か」
根負けがして、彼は、次の夜にお八重をたずねた。――しかし、勃然として、かれの気持は、その日から一変していた。
「丈八郎に出会ったら一討ち!」
と、むしろそれを、希望していた。
が、その夜も、丈八郎は留守で、裏の木戸には、末娘のお信が立っていた。この娘は、また何というほがらかに出来ているのか、出戻りの姉にいいつけられて、いつも、恋の番をしているのである。
お八重は、彼を見ると、
「まあ、憎い……」と、膝に、恨んで、
「あんなに、お手紙をあげたのに、たった一度の御返辞も下さらないで」
「いつか、遅く帰った時から、風邪心地で寝ていたのだ」