Classiques japonais avec furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lisez 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 178 609 caractères · 362 écrans
二
「米沢への江戸土産に、その首を貰った」
「ばッ、ばかなッ。……わ、笑わすなよ、丈八。俺こそ、貴様の首がぜひとも入用だ。江戸への、米沢土産に、てめえの首をぶら下げてゆけば、ちと、閾はたかいが、一時の身の置き場はある」
「だまれ、姉の怨みも」
「それで来るなら、それもよし、返り討ちだぞ」
「何の」
「くそうッ」
二
ちかッと、青い夕月の光が、脇差の刃に刎ねた時、一角の体は、肩を落して、豹のように、丈八のふところに、はいっていた。
だっッ、と足で搏った。
(不覚)
と、丈八は、柄がしらで、一角の小手を突いたが、とたんに、足が浮いた。――投げ――食ったな――と宙で感じると、逆さまに見える敵の影を、
(おのれっ!)
と、払ッた。
びゅっと、風の立つような勢いで、一角は後へ跳んでいた。でも、切っ尖は、彼の睫毛から、三寸とは、離れていなかった。
とたんに丈八は、見事に五体を、抛られていたのである。本能的に、刀だけは、ぴたっと、前へかまえていた、そして、一角はと見ると、大刀は抜かず、小脇を払って、あれが、ほんとの一角の眼か――と見られる凄い眸を、ジッと刃のみねから真っ直ぐにつけている。