Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

Lisez 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 178 609 caractères · 362 écrans

Aozora Bunko

――ところで今、世の中を見ると、天明の大飢饉だ」

「ム。食えてるのは、泥棒と役人だけだ」

「ここで一番、顔の揃った五人で、食えない奴を、食わしてやる。――という仕事は、面白いぜ」

「じゃ、義賊になるのか」

「そうよ。義賊になったッて、自分の贅沢ぐらい、いくらでも出来らあな」

「やろうやろう」

「やるかい、兄貴たちは」

「おめえッちが、そういうなら――」と、七も、五郎八も、雷同した。

年長の二人は、いい加減な顔つきだったが、丹三、鼬、仁太の三人は、将門が旗上げでもするような気持だった。同時に、本職の七之助には、小猿という立派な異名があるが、自分たちにはそれがない。何か、有名になりそうな、いい異名を持ちたいという慾と、相談も、出て来て、その結果――

暁天星五郎――(羅宇屋煙管五郎八)

鼬小僧新助――(八百屋の御用聞き新助)

紫紐丹三郎――(仮面屋の伜丹三郎)

雲霧仁左衛門――(応挙の内弟子仁太郎)

とこう自分自分で変え名を作って、すっかり、いい気持になった。

雲霧は、みんなの出会った、間の山の茶屋の名に思いついて、そのまま、自分の異名に取ったのである。

仁太郎改め仁左衛門――十七歳の雲霧は、それっきり、京都へは、帰らなかった。